誰がために国家はあるのか
−北欧を旅して思う−
北欧三国視察の感想 浅井優子(東京ブロック)
今回の海外税制視察は2010年6月6日から15日までの10日間、フィンランド、ノルウエー、スエーデンの3国について行なわれました。
視察の具体的結果については秋季研究集会(2010年10月17日〜18日:名鉄犬山ホテル)に譲ります。ここでは一旅行者としての私の若干の感想を述べてみたいと思います。
10日間の視察期間中、政権が鳩山首相から菅氏に代わり、消費税率10%引上げという菅首相の突然の発言が、参議院選挙の一大争点になっていました。
折りしも北欧から帰ったばかりの私の脳裏には、これら3国の国民に対する国家のあり方が強烈に焼きついていたこともあって、菅首相の消費税率10%引上げ発言の向うに、政策の欺瞞性と無責任と浅薄さを見ずにはいられませんでした。
21世紀に入ってからの10年間で、私達の国日本は、収入200万円以下の貧困層を1000万人創出し、他方で無駄な電力の使用、ビル風、狭くなるばかりの上空など、環境破壊の一つとしか思われない超高層ビルが日本の主要都市に林立するようになりました。こうした結果に対する真摯な議論を無視して、消費税率引上げだけを指向する国の未来に、どうして希望など抱けるだろうかと思いました。
ヘルシンキ、オスロー、ストックホルムには、こんなビルは1棟も見ませんでした。歴史を思わせる5階建て程度の、古い建物を廻る狭い石畳の道路のゴツゴツとした感触に、私は生きていることを実感するような落ち着きを感じました。
そういう古さと一緒に市民は生活しています。古いために使い勝手が悪い、危険だなど問題は生じていることもあると思いますが、簡単に建替えたりしないで使い続ける「無駄」を受忍するところに、これらの国の豊かさを思いました。賃金水準は高くその3割から5割は税金と社会保険料など負担。しかし社会保障制度が充実しているので、残りは貯金せずに消費に回す。消費税率の基本税率は25%(食料品は12%)。物価は3国とも大変高いというようなことは良く知られているところです。
3国の人口はフィンランドとノルウエーがそれぞれ約500万人、スエーデンが約1000万人と聞きました。このことが新自由主義経済政策を進めながら、同時に社会保障制度を充実させている一つの要因ではないのだろうかと思いました。人口問題は国が資本のためにではなく国民のためになければ、国そのものが消滅することを示しているのではないかと思いました。 今回の北欧3国の旅は、変わろうとしている時代に、「誰がために国はあるのか、その答を皆が求めていると私は思いました。
(あさいゆうこ) |